学術者からの
推薦コメント

共食の場であるこの『シニア食堂』に
思いっきり飛び込んでみましょう。

人生100年時代となり、身体の健康だけではなく、生きがいや社会参加、地域貢献などの活力を生み出す地域コミュニティも求められます。

健康長寿実現のために、より早期からのフレイル(虚弱)予防、及びそれを実現するための住民主体活動のエンパワメントも必要になってきます。なかでも「食」は重要であり、生きていくための活力の源です。しかし、残念なことに孤食はここ数十年間、増加しているようです。

食事内容、食行動、人間関係等も含めた食環境において、問題点は多様化しています。次世代を担う学童期だけではなく、高齢期(シニア)の方々においても、「共食」は食事の味や見た目だけではなく、美味しいものを食べる満足感、共に味わう人間関係構築、皆で料理し合う独創性、同じ時間を共有する価値観など、様々な環境が絡み合うダイナミックな営みですね。

一人暮らしをしている人にとっては、誰かと食事をする機会をつくることは難しいかもしれません。

しかし、高齢者では、一人暮らしでも、誰かと一緒に食事をする頻度の高い高齢者ほど、食品多様性も高く、共食することは心身の健康に大きく影響することは間違いありません。

したがって、共食の場であるこの『シニア食堂』に思いっきり飛び込んでみましょう。

そこには新たな出会いと喜びが待っています。そして、新たな自分にも出会うことも出来、充実したセカンドライフの構築につながるのでしょう。

飯島 勝矢(いいじま かつや)

医師、医学博士.東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター 教授
1990年千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 助手・同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016年より東京大学高齢社会総合研究機構教授、2020年より現職。
内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員、厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」構成員、日本学術会議「老化分科会」「高齢者の健康分科会」ボードメンバー
【専門】老年医学、老年学(ジェロントロジー:総合老年学)、特に健康長寿実現に向けた超高齢社会のまちづくり、地域包括ケアシステム構築、フレイル予防研究、在宅医療介護連携推進と多職種連携教育
【近著】
『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(KADOKAWA、2020年)
『東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣』(KADOKAWA、2018年)
『健康長寿 鍵は“フレイル”予防 〜自分でできる3つのツボ〜』(クリエイツかもがわ、2018年)

徳永 弘子(とくなが ひろこ)

理化学研究所特別研究員
東京電機大学システムデザイン工学部研究員
昭和女子大卒。一般企業に就職後結婚退職、主婦業の傍らで東京電機大学研究室に勤務。2014年同大学にて博士(工学)を取得、同年より現職。電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループヴァーバル・ノンヴァーバル・コミュニケーション研究会運営委員,食メディア研究会専門委員
【専門】人と人,人と機械のコミュニケーションを研究。特に食事中の多人数コミュニケーションの仕組みと心理的効果の解明を推進。コミュニケーションが成立するメカニズムを人間行動学,言語学,社会学,心理学の研究者らと横断的に進めている。
日本テレビ「所さんの目がテン!」、TBSラジオ「森本 毅郎 ・スタンバイ」,日本経済新聞など新聞各紙に取り上げられ注目を浴びている。
【受賞歴】電子情報通信学会HCGシンポジウム2017,2018,2020にて最優秀インタラクティブ発表賞,電子情報通信学会第13回ヒューマンコミュニケーション賞受賞,日本官能評価学会2014年度大会優秀研究発表賞など.

調理から食事コミュニケーションに至るプロセスすべてがシニア食堂にあったのです。

私はグループで参加する食事コミュニケーションと人への心理的効果を研究する中で、2020年の夏の終わりにシニア食堂様と出会いました。お誘い頂いた定例の交流会を拝見し、まず驚いたのは、会員さんの参加意欲の高さと笑顔の多さです。「みなさん!こんなに楽しそう!」というのが第一印象でした。

これまで多くの研究によりQOLの向上、維持に関して調理、食事を介したコミュニケーションは重要な活動であることが報告されています。食材を組み合わせて献立を考える行為は思考を活性化させます。調理は手先を使い、火や包丁など危険な道具を扱うため注意力を喚起します。もし、仲間との協働調理となれば、得手不得手を相互に補完し、自然とコミュニケーションが創出される場となります。高齢になると味覚機能が低下すると言われていますが、仲間と共に作った料理の味を評価し合うことは、味覚を刺激します。私の研究では、食事を介して会話をすると、食事のない時に比べ話題が豊富になることが明らかになっています。

これらの知見を踏まえれば、私が初めて見たシニアさんの溢れんばかりの笑顔の理由は明らかです。調理から食事コミュニケーションに至るプロセスすべてがシニア食堂にあったのです。シニア食堂が多くのメディアの注目を集めてきたのも合点がいきます。心豊かな高齢期を楽しみたい、自身の好奇心を活性化し様々な体験をしたいと望む方には、シニア食堂での活動を強くお薦めします。